高血圧治療に関するWHO/ISH声明,2003年版(WHO/ISH 2003)
2003 World Health Organization (WHO)/International Society of Hypertension(ISH) statement on management of hypertension
齊藤 郁夫 (慶應義塾大学保健管理センター)
WHOとISHは合同で1983年以来3年ないし5年間隔で高血圧治療ガイドラインを作成しており,現時点では2003年の声明が直近のものである.
高血圧治療に関するWHO/ISH声明,2003年版(WHO/ISH 2003)の主な変更点
- 高血圧患者のリスク分類をWHO/ISH1999で用いた4つ(低,中等,高,超高リスク)からWHO/ISH 2003では3つ(低,中等,高リスク)へと単純にした.
- 高血圧患者における診断,治療の進め方についてWHO/ISH1999では低リスク者は生活習慣の改善で6~12カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始,中等リスク者は生活習慣の改善で3~6カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始,高,超高リスク者は生活習慣の改善に加えて,薬物治療開始としていたが,WHO/ISH2003では明確にしなかった.
- 降圧目標についてWHO/ISH1999では若年者,中年者で130/85mmHg,高齢者では140/90mmHgとしていたが,WHO/ISH2003ではすべて140/90mmHgが基本となり,心血管病,糖尿病,腎疾患を併発する高リスク者では130/80mmHg未満が適切とした.
- WHO/ISH1999では降圧療法に使用される主な薬剤として,利尿薬,β遮断薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬,ARB,α遮断薬の6種類をあげて,副作用については明らかな違いがあるが,降圧効果には著明な差はないとしていた.WHO/ISH2003では積極的適応のない,低リスク者には利尿薬を第一次薬とした.
高血圧患者のリスク分類
WHO/ISH1999の後に発表された日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2000(JSH2000)においては,低,中等,高リスクの3つにリスク分類を行ったが,これに影響されたためか,WHO/ISH2003でも4つから3つのリスク分類に変更した.4つのリスク分類は欧州高血圧学会-欧州心臓病学会高血圧治療ガイドライン2003(ESH-ESC2003)で引き続き用いられている.
高血圧患者の診断,治療の進め方
WHO/ISH1999では低リスク者は生活習慣の改善で6~12カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始,中等リスク者は生活習慣の改善で3~6カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始,高,超高リスク者は生活習慣の改善に加えて,薬物治療開始としたが,この考えはESH-ESC2003で引き続き用いられている.JSH2004では低リスク者は生活習慣の改善で3カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始,中等リスク者は生活習慣の改善で1カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始として,薬物治療までの期間を短くしたが,ESH-ESC2007において低リスク者は生活習慣の改善で数カ月観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始,中等リスク者は生活習慣の改善で数週間観察し,その後,血圧が高ければ薬物治療開始として,薬物治療までの期間がさらに短縮された感がある.
表 合併症と選択薬:WHO/ISH2003とJSH2004の対比

降圧目標
WHO/ISH1999の若年者,中年者で130/85mmHg,高齢者では140/90mmHgの勧告は,JSH2004に引き継がれている.
降圧療法に使用される主な薬剤
WHO/ISH1999の利尿薬,β遮断薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬,ARB,α遮断薬の6種類はJSH2004において踏襲されている.ESH-ESC2003,ESH-ESC2007ではα遮断薬を除いた5種類が勧告されている.利尿薬は世界の多くの地域で最も安価であり,費用対効果に優れており,WHO/ISH2003では利尿薬が第一次薬とされており,JNC-7と類似している.WHO/ISH2003とJSH2004の合併症と選択薬を対比して示す(表).
- 用語解説-費用対効果
- 費用には降圧薬の薬価のみならず,治療過程で発生する糖尿病,脳卒中,糖尿病腎症などの治療費用も含まれることに注意すべきである.
- 略語
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- ISH : International Society of Hypertension
- JSH : Japanese Society of Hypertension
- JNC : Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure
- ESH-ESC : European Society of Hypertension-European Society of Cardiology
- References
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- World Health Organization, International Society of Hypertension Writing Group : J Hypertens 21 : 1983-1992, 2003
- Guideline Committee : J Hypertens 21 : 1011-1063, 2003
- Mancia G et al : J Hypertens 25 : 1105-1187, 2007
- Saito I et al : JMAJ 48 : 574-585, 2005
※メディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第8章診断・治療指針より、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。
- 関連リンク
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JNC-7
高血圧治療に関するWHO/ISH声明,2003年版(WHO/ISH 2003)
ESH-ESC2007高血圧管理ガイドライン
ABPM/家庭血圧測定
ACC/AHA心不全ガイドライン