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ACC/AHA2005 Guideline Update for the Diagnosis and Management of Chronic Heart Failure in the Adult
大内田昌直(久留米大学医学部内科学心臓・血管内科)
今泉 勉(久留米大学医学部内科学心臓・血管内科)
米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)は,2005年に心不全ガイドライン改訂版(表1,2,図)を発表した.今回は心不全ハイリスク群の早期検出や予防が強調され,ICDとCRTの適応拡大や終末患者へのホスピスケアに重点がおかれている.
1980年代の半ばから心不全治療に関する大規模試験の結果が公表され,これに基づきACC/AHAが初めて心不全ガイドラインを発表したのは1995年であった.その後,新たなエビデンスが追加され,2001年に続き,今回で2回目の改訂となる.2005年版の背景には日本と同様,米国でも深刻化する高齢化問題と膨大な医療費負担という社会情勢がある.治療法の進歩にもかかわらず心不全による死亡数は着実に増加し年間5万人にのぼり,心不全入院の80%は65歳以上である.年間入院回数も増加し,2005年の米国における心不全医療にかかわる総費用は279億ドルになると推定された.これらに基づき,今回は予防医学的な観点からの介入と終末医療を新たに盛り込んでいる.いかに,早期からリスクのコントロールを行い心不全への移行を食い止めるかが重要課題である.
2001年の改訂では,「心不全は進行する疾患」の概念から,発症と進行を考慮し心不全をA~Dの4段階のステージに分類するという新たな試みがなされた.最初の2つのステージA,Bは心不全のリスクを有する無症候性の心不全前状態に相当する.ステージC,Dは心臓に構造異常があり,症状と徴候が出揃った症候性心不全状態とする.今回の改訂はこのステージ分類の重要性がより強調され,早期診断と適切な治療に重点がおかれている.つまり,心不全症状はないがリスクの高いステージAやBの段階でも積極的に介入することを強調した内容となっている.
ステージAではClassIの項目のうち,高血圧や脂質異常のコントロールは改訂前と同じであるが,糖尿病のコントロールが新たに追加され,動脈硬化性疾患を有するハイリスク患者の二次予防や心筋症家族歴のある患者や心毒性物質使用者における心機能評価も追加された.また,これらハイリスク患者の心不全発症予防に対する薬物療法として,HOPE試験の結果を踏まえてACE阻害薬とARBをClassIIAで推奨している.
ステージBでは心筋梗塞後の患者には左心機能低下や心不全の有無にかかわらずACE阻害薬とβ遮断薬の使用を推奨し,ACE阻害薬に忍容性がない場合ARBを用いることもClassIに追加された.これはVALIANTの結果を受けての勧告と考えられる.またClassIIAとして高血圧や左室肥大に対するACE阻害薬やARBの投与,無症状の左室収縮能低下に対しACE阻害薬に忍容性がない場合ARBの使用,慢性期の心筋梗塞で左室収縮能低下に対するICDの植え込みの3項目が新たに追加された.
ステージCでは利尿薬,ACE阻害薬,β遮断薬がClassIの位置付けであることに変わりはないが,とくにβ遮断薬についてはカルベジロール,ビソプロロール,コハク酸メトプロロールの3剤が推奨されている.またACE阻害薬禁忌例にARBを用いることは前回ClassIIから今回ClassIと変更され,ACE阻害薬ですでに治療されている患者に対するARBの併用療法については今回ClassIIの勧告が新設された.また中等度~重症心不全への抗アルドステロン薬の使用はClassIIAからClassIに推奨されている.ただし,ACE阻害薬とARB,抗アルドステロン薬のルーチンでの三者併用はClassIIIであり注意を勧告している.これは重篤な副作用である高カリウム血症を意識していると考えられる.またジギタリスはClassIIAで心不全入院の予防に有益としている.今回の改訂版ステージCで注目されるのが非薬物療法の追加,とくにICDである.ClassIとしてVT/VF既往歴のある左室収縮能低下の心不全患者に対する二次予防,慢性期心筋梗塞で左室収縮能低下に基づく心不全患者の突然死予防,あるいは非虚血性心不全の一次予防として推奨されている.MADIT-KGFLB1,SCD-HeFTのエビデンスを踏まえての措置である.またCRTもClassIに新設され,運動療法もClassIIAからClassIに昇格した.
ステージDでは標準治療に反応せず移植の適応にもならない1年生存率が50%未満のような一部の末期心不全患者に対してLVADの永久的な使用を推奨している.あるいはドブタミンやミルリノンの外来環境での使用も考慮されるべきであるとしている.また,心臓専門医の役割に終末期医療に関する情報の提供を追加した.治療の進歩は生存期間の延長をもたらしたが,入退院をくり返しQOLの向上には結びつかない.終末期の患者,家族を支え緩和ケア・ホスピスケアを提案し取り組むことを推奨している.
表1 勧告分類とエビデンスレベル

(文献 1 より引用,改変)
表2 心不全の各ステージにおけるARBの適応

(文献 1 より引用,改変)

図 心不全発症のステージとそれに基づく推奨治療
FHxCM:心筋症の家族歴,ACE:アンジオテンシン変換酵素,ARB:アンジオテンシンKGFLB1(AT1)受容体ブロッカー.
(文献 1 より引用,改変)
CIBISIII(Cardiac Insufficiency Bisoprolol Study III)2)では心不全患者に対してβ遮断薬をACE阻害薬に先行投与し,長期的には良好な結果が得られた.また,腎機能低下や貧血が心不全の独立した予後規定因子3)であることも最近注目されており,これらは今後のガイドライン改訂に影響を及ぼすと思われる.
今回のガイドラインでは,うっ血性心不全(congestive heart failure;CHF)という用語をやめ,心不全(heart failure;HF)と呼ぶように提案している.これは,すべての患者が容量負荷を示すわけではなく,疲労と運動耐容能低下を主症状とする患者も存在するからである.このように心不全の臨床判断は複雑であり,治療のタイミンングの妥当性もまだ明確ではない.ACC/AHAは,心不全治療はまだ発展途上であるとの認識をもち,今後ガイドラインの改訂を重ねることが適当であると述べている.
※メディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第8章診断・治療指針より、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。